契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「私も勝手に会社に行ってしまいましたし……。でも、櫻庭さんは私のことを知られたくなかったんじゃ……」
「えっ?」
「前に、『誰かに関係を訊かれても言わないように』って……」
「ああ……。それも話さないといけないな」


 思い出したように頷いた彼が、再び眉間に皺を作った。


「実は、以前頼んでいた家事代行サービスの女性スタッフからしつこく付き纏われていて……。ちょうど君くらいの年齢だった。特に親しくしたことはないんだが、向こうはそうは思っていなかったのか、まるで話が通じなかった」
「ストーカー行為をされていた……ということですか?」
「まあ、そうだな。実際に盗聴器を仕掛けられる寸前だった。その日は偶然早く帰宅できて、盗聴器を仕掛けようとしてたところに鉢合わせたんだ」


 話を聞いているだけで、ゾッとする。
 仕事で家を出入りしていた人間が、自分の家に盗聴器を仕掛けようとしていた。
 そんな場面を見たら冷静ではいられないし、他にもなにかされたかもしれない……などと悪い想像もしてしまうだろう。


 このマンションはセキュリティが厳しく、カードキーは持ち出せない。
 そんな状況下でも盗聴器を仕掛けられそうになったなら、他人を家に入れることに大きな抵抗感を抱くに違いない。

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