契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「パーティーって、どういうものなんですか?」


 一瞬、櫻庭さんの目が小さく見開かれる。
 彼の表情はすぐに動揺を隠してしまったけれど、明らかに予想外そうにしていた。


「うちの創業記念パーティーで、弁護士は基本的に妻やパートナーを同伴する。恋人なら同伴させないことも多いが、婚約者となればだいたいは出席してもらうんだ」


 彼いわく、アーサー・椎名法律事務所は日本とアメリカにそれぞれ代表がいて、自社が主催するパーティーではパートナーを同伴する海外式なのだとか。
 よほどの事情で都合がつかない場合を除き、同伴は免れない。
 しかも、浅間さんも招待されている。


「所長から『婚約者がいたなんて初耳だ。今度のパーティーでちゃんと紹介してくれよ』と言われて、『彼女の都合がつくかわからない』とは答えたんだが……」


 櫻庭さんなりに、回避しようとはしたのだろう。
 ただ、彼の立場や今の状況を考えると、それは難しいに違いない。
 パートナーを同伴しないとなれば、櫻庭さんの立場が悪くなるかもしれないし、さらに詮索されたり疑念を向けられたりすることもあるはず。


「私、結婚式に出席した経験しかないんですが、それでも務まりますか……?」
「……いいのか?」


 向けられた瞳には、驚きの中にも縋るような感情が微かに覗いている。
 そんな顔を前にすると、思考とは裏腹になぜか『無理です』とは言えなかった。

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