契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
「正直、ストーカーには恨まれてるかもしれない。愛情や執着が恨みや憎しみに変わるのはよくあることだ。仕事上、俺はそういう人間を何人も見てきた」


 冷たい目つきには、人を寄せつけないような雰囲気がある。
 ところが、次に私に向けられた瞳には、真剣な熱がこもっていた。


「それなのに、こんなことに巻き込んで申し訳ないが、婚約者として振る舞ってほしい。もちろんなにかお礼……報酬も渡す。それと、君のことは必ず守ると約束する」


 頭を下げられ、たじろいでしまう。


「あ、あの……頭を上げてください」


 頭では、無理だと思っている。
 にもかかわらず、心と唇は不安を抱えた思考とは真逆の動きを始めようとする。


 パーティーに縁なんてない庶民のくせに、困惑でいっぱいなのに……。

「とりあえず、パーティーに行くだけなら……。その……上手くできるかはわかりませんけど……」

 私は控えめな口調ながらも、はっきりとそう答えていた。


「恩に着る。君に危害が加わることがないように必ず守るから」


 真っ直ぐに見つめられ、その声音の力強さにどぎまぎしてしまう。
 意図せずに跳ねた鼓動は、きっと不可抗力。
 そう思うのに、色々なことが起こりすぎたせいか心が落ち着かなかった。

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