契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
四章 雨に閉ざされた夜
 暦は、十一月も半分を過ぎたところ。


「那湖、どうかした?」


 仕事が終わった私は、侑李さんに誘われてイタリアンレストランを訪れていた。


「いえ……。すみません。少しぼんやりしてしまったみたいです」
「そうか」


 心ここにあらず……という状態だったのは、今朝また中郷課長からメッセージが来ていたから。
 内容は、【会いたい】だけ。
 けれど、私の気持ちを落とすには充分な威力があった。
 今月に入ってから、課長からの連絡はなかった。
 そのため、油断していた部分もあって、余計にダメージが大きいのかもしれない。


 最初こそ、中郷課長は数日に一回の頻度でメッセージを送ってきた。
 ただ、そのうち週に一度、十日ごと……と徐々に間が空いていき、最近は送られてきていなかった。
 だからこそ、課長のことがずっと脳内から消えない。


 いい加減、ブロックをするべきだろう。
 そう思うけれど、かえって刺激してしまわないか……という心配もある。
 メッセージの頻度が減っていることもあって、このまま諦めてくれることを期待する気持ちもあった。


「食べられるなら、スイーツでもどうだ?」


 もやもやとした感情を抱えたままの私に、侑李さんが優しい瞳を向けてきた。


「もう充分です」


 このお店は、私の家の最寄り駅から程近い場所にある。
 今日も仕事だった彼は、私よりも多忙なのにわざわざこちらまで来てくれたのだ。

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