私をフッた元上司と再会したら求愛された件
 週真ん中、夜のオフィス街。足早に駅へ向かう人が多い中、ゆっくり歩く私たちの間に漂う空気はどこか異質な気がした。

 落ち着かなくて隣の戸川さんをチラリと見やる。そういえば、今日はいつものスーツではなく、ラフなスタイルだ。カーキのシャツはゆったりとしたシルエットで、ズボンもチノパンといった出立ち。仕事の時よりも距離が近づけた気がしてドキドキする。

「あ、の……今日はお休みだったんですか?」

「いや、今日はミーティングがなかったから在宅勤務にしてたんだ」

「在宅、いいですね。プログレの時はたまに在宅してましたけど、今の会社は外出多いから基本出社なので、ちょっと恋しいです」

「楽だよな。俺としてはえだまめを見ながら仕事できるのが大きい」

「えだまめちゃん! 変わらず元気ですか?」

「元気だよ。良ければ今から見に来る?」

「えっ?」

 サラリと言われた思いがけない誘いに、私の顔面温度が急上昇した。私を見下ろす戸川さんの目元もうっすら赤い。

「あっ、いや、ごめん。先走った。どっか店に入るより、家の方がゆっくり話せるかなって思って……変なことは何もしないから、多分……いや、絶対」

 目元の赤みが頬を通って耳まで伝染した戸川さんは、額に拳を当てて目を伏せた。滅多に見られないであろう照れ顔かが尊すぎて、私は感動を噛み締めるように口元に手を当てた。
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