記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで
父が部屋を訪ねてきたのは、それから二週間が過ぎた頃だった。
一月ぶりに会う父は、見たこともないほど憔悴しており、リディアは思わず駆け寄った。
「お父さま? 顔色が……」
もしかして、自分のせいで……。そんな思いが胸を過ぎった瞬間、父は絞り出す様に言った。
「すまない」と。
それは謝罪というより、懺悔する様な声だった。
「ジェイドのことで、お前に話さなければならないことがある」
「……どういう、ことですか?」
正直、何を今さら、と思った。
けれど、聞かない選択肢はない。
父は部屋の奥へ進み、窓辺に立つと、雪空を見つめる。
「お前とジェイドは、婚約していた」
――父は静かに語った。
リディアが記憶を失ったのは、危篤のジェイドを助ける為に使った禁忌魔法の代償であること。
父はリディアの残した手紙に書かれたとおり、ジェイドとの婚約を白紙にしたこと。
けれど、ジェイドはもう一度婚約を望んだことを。