記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで



 父が部屋を訪ねてきたのは、それから二週間が過ぎた頃だった。
 一月ぶりに会う父は、見たこともないほど憔悴しており、リディアは思わず駆け寄った。

「お父さま? 顔色が……」

 もしかして、自分のせいで……。そんな思いが胸を過ぎった瞬間、父は絞り出す様に言った。
「すまない」と。

 それは謝罪というより、懺悔する様な声だった。

「ジェイドのことで、お前に話さなければならないことがある」
「……どういう、ことですか?」

 正直、何を今さら、と思った。
 けれど、聞かない選択肢はない。

 父は部屋の奥へ進み、窓辺に立つと、雪空を見つめる。

「お前とジェイドは、婚約していた」


 ――父は静かに語った。

 リディアが記憶を失ったのは、危篤のジェイドを助ける為に使った禁忌魔法の代償であること。
 父はリディアの残した手紙に書かれたとおり、ジェイドとの婚約を白紙にしたこと。
 けれど、ジェイドはもう一度婚約を望んだことを。
< 20 / 27 >

この作品をシェア

pagetop