婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
そう一礼して踵を返した、そのとき。足もとにあった側溝の溝にパンプスのヒールが引っかかってよろけてしまった。

「バカ!」

慌てて後部座席から飛び出してきた彼に体を支えられる。彼の胸に手をついたまま顔を上げると、眉間に皺を寄せた彼と目が合って慌てた。

「い、今のは、たまたまですからっ」

「いいから行くぞ。部屋はどこだ?」

タクシーに待ってもらうようお願いして、再び私の腰に手を回す彼。

低くて冷たい声が妙にくすぐったいのは、彼の口調と行動が真逆だからだろう。

「……三〇四です」

彼に連れられマンション入り口の段差を上り、エレベーターに向かう。

ドアが開くと、真正面の鏡に抱き合うような格好をした私たちが映って、余計にいたたまれない気持ちになった。

彼はこの状況をどう思っているのだろう。

迷惑かな。呆れているかな。なにも文句を言わないところを見ると、先ほど言っていた通り、飲ませすぎたと反省しているのかもしれない。

少なくとも、私のようにドキドキはしていないはず。そんなことを思いながら俯いていると。

「……部屋に入ったりしないから安心しろ」

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