婚活!~絶対幸せになれる婚、探してます~
唐突にそんな言葉が降ってきて、目を丸くする。ああ、私が怯えていると思った?

女性がひとり暮らししている部屋に男性を案内するというのは、確かに物騒な話に聞こえるかもしれないが、彼に限って下心があるとも思えない。

どちらかというと聖澤さんは草食系というか、性欲や色事への関心は薄そうに見える。恋愛にも結婚にも興味がないと断言するくらいだ。

「そんな心配、してません」

彼はなにも言わず、私の腰を抱いたまま三階に止まったエレベーターを降りる。

部屋の前。「足もと気をつけろよ」と念を押して彼が腕を解いた。

ここまで来て転んだら、いよいよ部屋の中まで運ばれかねない……。足もとに注意を払いつつバッグから鍵を取り出し開錠する。

「送ってくださってありがとうございました」

「しっかり水を飲んでおけよ」

それだけ言って、ようやく安心したらしい彼が踵を返した。

彼のうしろ姿を見送りながら、夢を見ているような気分で部屋に入る。

信じられないことの連続だった。聖澤さんとふたりでお酒を飲む日が来るなんて考えもしなかったし、わざわざ家に送り届けてくれるほど親切な人だとも思わなかった。

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