二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~
「でもさっきも言った通り、ずっと恋愛を避けてきたんです。父がどんな人かも知らないし、母は私を捨てて出ていきました。それ自体はもう悲しかったりしないんですけど、恋とか愛とか、そういうものに期待が薄いというか⋯⋯」
社会人になって四年目、今年で二十五歳になる。この年齢ならば交際に発展した場合、その先に結婚を見据えている人が多いだろう。
けれど千咲には、結婚願望というものがない。
したくないわけではなく、結婚そのものに価値が見出だせないし、自分が結婚するという未来が想像できないのだ。
「それでもいい、と言ったら?」
「⋯⋯え?」
「深く考えなくていい。どうしようもなく寂しくなって、ひとりでいたくない時に、俺を頼ってほしい」
「どうして、そんな⋯⋯」
問いかけた瞬間、千咲は再び櫂の腕の中にいた。先ほどのような慰める包容ではないのは、恋愛に疎い千咲にもわかる。