気まぐれヒーロー
そして次の日。
登校して廊下を歩いていると、やたらと視線を感じた。
女子たちが私をちらちら見ながら、声を潜めて何やら話している。
気にはなったけど、何でもないフリをして教室へ向かっていると──
「よく告白なんてできるよね~。よっぽど自分に自信あるのかなぁ、超地味なくせにさぁ」
「自意識過剰ってやつじゃないの?」
一際でかい声が、私の耳を支配した。
教室の前にたむろしている、一つの集団。
ケバケバしい女子の群れは、本城咲妃のギャル軍団だった。
そして本城咲妃本人が、大声で昨日の出来事を周囲に話していた。わざと、私に聞かせるように。
だからみんな知ってるんだ。だから、噂してたんだ。
田川のこと好きな子、多いもんね。
嫌になる。
私、そんなにも悪いことしたんだろうか。
フラれたじゃん。無様に、惨めに、こてんぱんにやられたじゃんか。
それでも、まだ足りないの?
まだ私に“自分の彼氏に告白した”っていう恨みがあるの?
唇を噛み、聞こえないフリをして、私は彼女らを無視して自分の教室に入った。