気まぐれヒーロー
「……、ふはっ」
そんな子供でも騙されないような嘘に、ちゃっかりひっかかっちゃった両親を妙な顔で眺めていたハイジ。
ついに吹き出し、お腹を抱えて座り込むとげらげら笑っていた。
涙まで流して大爆笑している。
私は頭が真っ白になった。
両親を押し退けハイジに駆け寄ると、ヤツの首をぎゅうぎゅう絞めていた。
「貴様ああああ!!私の親をからかうためにこんな朝早くから来やがったのか、アァ!?どんな暇人だてめえは!!コケみたいな髪しやがってコラ、アルプスに埋めてやろうか!!」
自分でも何口走ってんのかわけわからんかったけど、目の前の緑に殺意がもりもりでとりあえず手に力を込めていた。
「うははは!わり、ももちゃ……ははは、そう怒んないでぶははは!!!」と、なおもヤツは笑い続けていた。
当の私の両親はといえば、
「あなた、外国人さんがウケてるわよ!私達何かおかしいこと言ったのかしら」
「ははっ、国際的ジョークが通じたみたいだね。ついに世界デビューだね!!」
と、殺気バリバリの私の後ろで和やかにしていた。
朝から大声で騒いでいたら、隣のおばちゃんまでもが家から出てきて不思議そうに私達を一歩引いて見ている。
「まあ、華やかな異人さん!」と、おばちゃんもハイジを発見するとお母さん達と同じ反応をしていた。
そんなおばちゃんに気づくとハイジは片手をあげ、例の「タクアンポリポーリ」の挨拶をおばちゃんにまでしたのだった。
まさかおばちゃんまでこんな馬鹿げたジョークにひっかかるまい……
と油断している私の前で、おばちゃんは緊張しながら「タクアンボリボーリ」とちょっと間違いながら挨拶を返していた。
魂が抜けていきそうだった。
全身の力が抜けた私はハイジの首を絞めることを諦め、遠い世界に旅立っていた。
ひーひー言いながら笑いの途絶えないハイジは「ぎゃはははは!ふ、腹筋が……!!」とごろごろ転がり、息をするのも苦しそうだった。
コイツ笑い死ぬんじゃないかと思ったけど、その方がヤツも本望だろうと納得し、私はハイジがこのまま笑い死にするのを祈った。