気まぐれヒーロー
この世のものとは思えない、美形。
そしてタガメな私。
…………。
タガメでも生きてていいですか……。
「俺が聞いてんだ、答えろ」
誰も言葉を交わさず、それどころか息さえ潜めているようなこの現状。
その空気を作り出している張本人、不良の頭の白鷹先輩だけが淡々と言葉を連ねていく。
切れ長の二重の目の奥にナイフのような鋭さを隠して、彼はハイジへとその目を向けている。
「カッコ悪ィよな~、“あの”白鷹次郎がたかが女一人にビクビクしてるなんてよォ」
ついにハイジも口を開いたかと思うと、白鷹先輩を挑発するような口調だった。
ちょ、ちょっとあんたこの場で何を……!!空気を読め空気を!!!
周りのみなさんも一同、ハイジへと視線を集中させた。
「この命知らずボーイが!」と。
ぎょっとして隣のハイジを見ると、笑ってたけどその笑いも少し引きつって見えた。
……怖いんだろうか、この無鉄砲くんも。恐い者知らずって感じなのに。
やっぱり白鷹先輩は、そういう存在なのだろうか。
っていうか……ハイジの発言はどういうことなんだろう。
ビクビクしてる?女って私のこと?
白鷹先輩が私にビクビク……するわけないよね。
だって私、タガメだし、ね……。
挑発を受けた当の本人は、無言ですっくと立ち上がった。
周りで一斉に、ごくりと唾を飲む音が聞こえた。
す、すごいなこの人……立ち姿がモデルみたいで、感動すら覚える。
無駄なものを全て省いたかのような、神がかったスタイル。
背がとても高いのに、顔小さいし足長いし。
やっぱりハイジ達みたいにこの人も制服はかなり校則違反な着こなしだけど、なぜかダラしないとは思わない。
なんて言ったらいいんだろう……サマになってるって言うのかな。
ゆったりした足取りで白鷹先輩は、ハイジと私の方へと歩いてくる。
その迫力に押されて、私は後ずさってしまっていた。
どうやって逃げようか。ハイジを盾にすればいいか。
そんなことしか、頭になかった。