気まぐれヒーロー


お母さんに怒られるかも、とヒヤヒヤしてたけど特に小言を言われることもなく。


「あんまり遅くまで遊んでちゃダメよ」と、注意されただけだった。

お父さんも似たようなことを口にしていた。


心配してたジャイアントスイングをかけられることは、なかった。命は助かった。


思えば、私はけっこう自由気ままに育てられている。


門限がそこまで厳しいわけでもなく、勉強についてもあまり口を挟まれたことはない。


両親は、私が思うようにさせてくれていた。


それは……お兄ちゃんのことがあったからなんだと、思う。




“どうしてお兄ちゃんは……死んだの?”




二人に問いただしたところで、返ってくるのは『バイク事故』。


それだけだろう。


お母さん、お父さん……本当の理由を知ってる?



でも、聞く勇気がなかった。


二人もまた、自分自身を責めてることを私は知ってる。

響兄ちゃんが不良になったのも、家に帰ってこなくなったのも


自分達のせいだと。


三年経った今、何でもないように振る舞ってはいるけれど……本当は癒えてなんかない。


お兄ちゃんの部屋は、お兄ちゃんが使っていたそのままに残してあるから。


お母さんは掃除はしても片づけることなく、お兄ちゃんの面影をその部屋に見てる。


片づけられないんだ。

お兄ちゃんはもういないって、帰ってこないってわかってるのに

頭でわかってたって、心がそれを否定するんだ。


ありもしない希望に……お母さんは縋ってる。


私にはそんな面を、見せないようにしてるけど。



聞けない。



“お兄ちゃんは、なぜ死ななければならなかったの?”



覚悟もないのに、そんなこと聞いちゃいけない。




その日、私はお風呂に入るとすぐにベッドに潜り込んで、眠りについた。


太郎さんに言われたことが頭に焼きついて離れなかったけど、それよりも疲労が上回っていた。


睡魔に襲われ、自然と意識が遠のいていった。





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