同期と私の、あと一歩の恋
「広瀬さん、すみません。山田さんっていつもあのテンションだから、合わせるのが大変ですよね」

私の目の前には、席を移動してきた営業事務の吉瀬望(きちせのぞみ)さんが座っていた。
その彼女が、申し訳なさそうに謝罪してくる。
さっきまで熱心に自分の推し活の話を聞かせてくれた人だ。
私より二歳年下の吉瀬さんは、仕事はいつも丁寧だし、話が面白くて気がつけば仲良くなっていた。

「いや、慣れてるから大丈夫よ。それに飲んでいるところを見せると満足してくれるでしょ」
「確かにそうですね」

山田さんの回避方法は習得済みで、毎回それを実践している。
 
「そういえば羽山さんは欠席?」

吉瀬さんといつも一緒にいるはずの羽山琴葉(はやまことは)さんがいないことに気づく。
この二人はニコイチといった感じで、飲み会の時はいつも隣り合って座っている。
吉瀬さんと同期の彼女は可愛らしい雰囲気だけど、よくお酒を飲むイメージだ。

「そうなんです。琴葉は片頭痛もちで、今日は頭が痛いって言うので帰らせました」
「大丈夫なの?」
「はい。薬飲んで家でおとなしくしてるってメッセージが届いてました」

気がつけば広いテーブルに吉瀬さんと二人きりだった。
ビールを飲みながら向かい合って話していると、どこからか視線を感じた。

ふと、少し離れた場所から数ヶ月前に本田くんに告白した女性が私をじっと見つめているのに気づく。
彼女と目が合い、どうしていいか分からなくて視線をさ迷わせた。

「どうかしたんですか?」

私の様子に気づいたのか、吉瀬さんが不思議そうに尋ねてきた。
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