恐怖遊戯

❧Prologue

蝉が鳴く音だけが聞こえる校庭。
その校庭に全校生徒約1000人が校長によって集められた。
「えー。全校の皆さん。おはようございます。」
何時もの口調とは違う、硬い口調に先生含め、校庭、いや、学校全体の空気が凍り付いた。
「先程、救急車やパトカーが走っているのを見た人、居るのではないでしょうか。」
校長の声がだんだんと震えていく、声の震えを必死に抑えているのがよく分かった。
「そして、今もあそこ…屋上のすぐ下にブルーシートが敷いてあります。」
そこまで聞いた生徒たちの中から、一学年の一組だけがザワついた。
「すみちゃん…は…?」
「ホンマや…すみかがおらん…」
か細く、それでいて校庭全体に響き渡るようなその声とともに、生徒たちの顔が青ざめていく。
挙句の果てには泣き出す生徒もいた。
校庭の端で生徒たちを見守っていた先生たちも、顔に手を当て、誰とも顔を合わせないようにしている。
「2年B組の人…気持ちは、気持ちはとても良く分かります。でも…今は先生も我慢しているから、今は少しだけ、頑張って落ち着いてください…。」
校長の声に、状況を察したさっきとは違うクラスの人も背伸びをしたりして、鋭い目で回りを見始める。端から順に、前から、後ろから順に。「すみか」という生徒がいるであろうクラスを見つめて。
「今、先生の言葉で状況を理解した人もいると思います。ですが、分からない人もいると思いますので、伝えます。」
そんなにヤバいことなのか… 普段は空気を読めない男子も、いつもなら長い校長の話に草臥れ喋り始める女子も。今ばかりは顔を強張らせて、手が激しく震えながらも校長とブルーシートだけを見つめる。
「今朝、2年B組の門井すみかさんが、今、ブルーシートが敷いてあるところで、血だらけになって倒れているところをある、先生が見つけました。」
やがて、校長も耐えられなくなり腕で顔を覆う。
この場にいる全員の身体が震える。
「そして、皆さんを集める、数分前に病院から、すみかさんが亡くなった。との連絡がありました。」
すみかが死んだ、そんな衝撃の事実に一部生徒たちは、悲しみに暮れ、座り込んでしまった。
まさか、あの、すみかが…誰からも好かれていたはずのすみかが、死んだ…?
もう何も聞きたくない。 耳をふさぐ生徒もいた。

「先生からは以上です。詳しいことは、担任の先生から聞いてください。では、皆さん、教室へ…帰りましょう。」
学校中が絶望感で包まれる中、校長が話を終わらせた。
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