恐怖遊戯
何度目だろう。クラスにいる全員が静まり考え込んでいる中、突然扉が ガラッ と開き、百合の花を持った生徒が現れた。
「先生。これっ、すみちゃんに…」
そういって、一つの空席へ歩いていき、机の上に百合の花を置く。
少しの間、生徒たちが百合の花を見つめる。
その、白く、華麗に咲く百合の花はどこか、少しすみかに似ていた。
見れば見るほど、生徒たちの心に刻まれた傷が抉られていくのだった。

暫くすると、耐えられなくなった一人の生徒が言った。
「さっきの話、しようぜ…。」
その一言で全員が我に返った。
教師も我に返り、百合の花を持ってきた生徒に向けてもう一度言った。
「最近のすみかさんの様子見ついて、何か思い当たる事、ありませんか…?」
話さない。
教師も、もう一度説明しようとはせず、ただただ、生徒たちの顔を見つめるだけだった。

やがて、さっきの百合の花を持ってきた生徒が小さく手をあげ、話し始めた。
「あ、あたしは特に変わったこと…無い、な。って思ったんだけど…ほ、ほら!あたし、そんなにすみちゃんと話さなかったからっ…ね、高嶺の花って感じで、っ。もうちょっと仲良かった子に聞いたほうがいいと思いまぁすっ…例えば…あ、あやか、とか?」
早口に言った後、ガタンッ、と座る。
全員が一人の生徒に目を向ける。
「じゃあ、あやかさん。何か、ありますか?」
あやか、そう呼ばれる生徒は言を発しようとはせず、何故か、笑みを浮かべていた。
「ぇ…っと、あや、か…」
「あやか、どうしたの」
「無理に言わんくてもええよ…?」
次々と心配の声が上がる。
そりゃあそうだ。無言のまま笑っているのだから。
肩を揺さぶる生徒もいる。
そんな中、急に席を立った。
大きく手を挙げる。
「はーいっ!!」
大きく、教室中に響き渡る声だった。
その声に驚きながらも教師は話を聞く姿勢をとっている。
「どうぞ。」
「はいっ!あたしが、やりました~っ!!」
そんな訳がない。
あやかは、すみかの一番の親友だった。
そのはずだった。
何故?
もしかしたら、『殺って』はいないのかもしれない。
「あやか、何、何をやったの……?」
息を呑む。
「え⁉そんなことも分からないのかぁ…残念!とんだ天然ちゃんだねぇ」
馬鹿にするような声。間違いない。此奴だ。此奴がやったんだ。
「あ、そっかぁ。君、天然の振りした、ぶりっ子ちゃん。だったねぇ…いやぁ。此奴に惚れてた男子、残念だったねぇ!」
ケラケラと笑う。
あやかを抜く全員の顔が凍り付いた。
もう、元には戻らない。
「いい?もう一回だけ、分かりやすく、言ったげるからね~。よく聞いときな。天然ちゃんっ」
語尾にハートが付いたような喋り方。
天然ちゃん、に向けてあおるような喋り方だった。
「あたしが、すみかを、殺して、あげたの!!」
笑う顔がまるで、氷のように冷たい。
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