占い師は、あの人の幸せを願う彼に、恋をした
「……SNS、開かなきゃよかったな」
その声は、小さくて、壊れそうだった。

「さっきね、好きだった人が結婚したって投稿してて……」
「写真つきで、すっごく幸せそうだった。」

梨沙の手が、スープのカップを包み込むように力を込める。

「もう、忘れたいのに……忘れられないの」

私は、そっとマグカップを棚に置いた。
すぐに言葉を返さなかったのは、
彼女の“いま”を、ちゃんと感じたかったから。

「……ずっと、引きずってたんだね」

その言葉に、梨沙は小さくうなずいた。

彼女の手が、紙コップを包むように握りしめられていた。
目元の笑みはすっかり消えて、声のトーンも低い。

「ずっと幼馴染で片思いしていたの。」

私は、そっと隣に立ったまま、彼女の顔を見つめる。

「……つらかったね」

梨沙はかすかにうなずいて、でもすぐ、ほんの少しだけ顔を上げた。

「でも……こんなんじゃ、だめだよね」
「式、来週なの。彼の。呼ばれてて。……普通に出席するつもりだったのに」

「……そっか」

「行くって決めたの、後悔してない。ちゃんと区切りつけたいし……“おめでとう”って、ちゃんと言いたいの」
「でもね……たぶん、私、ちゃんと笑えないと思う」
「それが、いちばん怖いの」

言葉の終わりに、梨沙の声が震えた。

私は、そっとマグカップを棚に戻しながら言った。

「……梨沙。もし、今の気持ちをほんの少しだけ、静かにできる方法があるとしたら……」
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