夕日が沈む丘にて
 このバス停でも茂之といろんな話をしたんだよなあ。
由紀子ってやつが茂之に惚れてることを話したら、、、。
 「ふーん、そうなの?」って言った切り黙っちまった。 本当はどうだったんだろう?
あいつは女っ気が無いって言うのか、興味が無いって言うのか、そんなのにはまったく反応しなかった。
 机にラブレターを入れられても反応しなかったって言うから余程に鈍かったのかなあ?
「女なんてこっちから食い付かなくても引っ付いてくる。 何も言わなくても付いてくるんだ。 後は見極めればいい。」
(悟ったようなことを言うやつだな。)って思ったけど言われてみればその通りかもしれないな。
 知ってるやつの中でラブレターを書きまくってみんなに振られたやつが居る。
そいつは結局、書く相手が居なくなって今はどうしてるんだか?
 あいつの葬式の日、吉田真理恵が本気で泣いているのを見掛けた。
周りの人たちに聞いたら卒業後にアプローチするつもりだったんだって。
うまくいかないもんだなあ。

 冬になると茂之は家から出てこなかった。 寒がりだって言ってたな。
「初詣に行こうよ。」って誘ったことも有る。 でも、、、。
「お願いすることなんて無いからいいよ。」って断られちまった。
あいつは欲ってやつが無いのかなあ?
 3年になった時、「卒業したらどうするんだ?」って聞いてみた。
けど「お前はどうするんだ?」って反対に聞いてきた。
 その時はまだ決めてなかったから黙っていると「自分でも決められない時に人に聞くもんじゃないよ。」って言ってきた。
冷めてんだな あいつ。
 そうそう、クラスの連中が大騒ぎしてる時も迷惑そうな顔してたもんなあ。
「茂之は入らないのか?」って誰かが聞いたら「興味無いから。」って素っ気なく返したんだ。
 帰り際、ここまでやってきてあの港を見ながら立っていたら、、、。
「あいつら、ああやって騒ぐことしか出来ないんだな。」ってボソッとこぼすから「いいじゃねえか。」って返したら「付き合い切れねえよ。」って吐き捨てた。
 まあ確かに俺もうざいなって思ってた連中だ。 分からんでもない。
そこへバスがやってきた。
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