姉妹と書いて いとこと読みます 1巻 旧家編
姉妹と書いていとこと読みます一巻1話
人物
・河野 柚生 (かわの ゆずき)
この物語の主人公。一人っ子。従姉妹の栞とはとっても仲良し。優等生なお嬢様キャラを演じているけれど本当は超明るい。私立菫女学院に通う。
・河野 栞 (かわの しおり)
柚生の従姉妹。柚生の母の妹の娘。ちょっと心配性だけど楽しいことが大好き。私立菫女学院に通う。
・河野 有栖 (かわの ありす)
柚生の母。栞の母で妹の安里とは仲が悪い。気が強いけれど優しい。
・河野 世也 (かわの せいや)
柚生の父。河野コーポレーションの社長。父に逆らえない。有栖のことを鬱陶しいと思っている。
・河野 匠 (かわの たくみ)
河野コーポレーションの元社長で世也の父。一族を取り仕切る。恐い。
姉妹と書いていとこと読みます
作・早乙女 有栖
プロローグ
従姉妹の栞は私の一番の理解者でいてくれる。一人っ子の私のに妹で時に姉。私達の母親は姉妹だけれど仲が悪い。だから自然と様子を見に来るのは叔父様と栞になった。叔父様のつまらない話はきかずに栞と話した。栞と話せるから前はつまらなかった叔父様達の様子見も楽しくなった。共感できたし共感された
1章
「柚生様!!大変なお知らせですと有栖様がお呼びでして」
私、河野柚生、中一女子。明るいとも暗いとも言われる。変わってるのは父・河本世也が大企業の社長で大きな豪邸に住んでいるということ。
あ、いけないメイドが私を呼んでる。真夜中だってのに。あ、「有栖様」っていうのはお母様のこと。イラつきながらも息女として丁寧に答えた。
「ええ、はいってよろしゅうございます。」
いつも丁寧に上品にするよう「教育」されている。素でいられるのは従姉妹の栞の前でだけ。すると顔馴染みのメイドが一人入ってきた。
「こちらにご案内いたします。」
そしてついた応接室にはお母様がいた。いたって平気そうではない顔で。
「柚生。来たのね。落ち着いて聞いて。安里と和也様が数分ほど前、息を引き取られたわ。」
はぁ!?叔父様と叔母様が亡くなった!?冗談じゃなくって。栞は、大丈夫なの。
しかし、旧家の息女が母上の前で無礼に振る舞うわけにはいけない。私は半分嘘で半分本当に「息女らしく」答えた。
「まあ。大変でしたわね。驚きましたわ。そうだわ。栞様は御無事でしたの」
公共の場で息女は誰もに様をつけなければいけない。例え従姉妹でも。
「ええ。栞様は御無事よ。」
ふぅ。良かった。安堵したのも束の間、私はとんでもないことに気がついた。栞はどこで育てられるんだろう。旧家の一人だから施設は使えまい。だったら河野家のどこかだよね。家だったらいいな。私といたほうが栞も幸せだろうし。
叔父様が亡くなってから数日。今日は超気が重い。栞のこれからも今日知らされる。だって今日はお父様の経営する河野コーポレーションの作った「河野ホール」で行われる河野家集会だもん。けれど会の中心は元社長・河野匠ことお爺様。偉そうに威張っている。顔も見たくない一族で一番嫌いな大人。行きたくないけれど一族の決まりだからしょうがない。
「柚生。出かけますわよ」
あっ。お母様が呼んでる。えっとバックはもったし身だしなみもOK。
「はあい」
河野ホールで。私の隣は、はとこの月奈。栞と違って分かってくれるどころか私に「息女」を強いて来る相手。
「開式のお時間でございます。速やかにお席におつき下さい。」
アナウンスが流れた。働いている人がいるなんて河野家の当たり前。
「これから河野家集会を始めます。まず河野匠様から河野栞様について話があります。」
するとお爺様が舞台に出てきた。
「去る六月十七日一族に尽くした河野安里と河野和也が苦闘の末息を引き取った。」
悲しいことなのにお爺様はむしろ嬉しそうに語り始めた。所々すすり泣きや会話も聞こえる。
「よって幼き河野栞を育てる人はいなくなった」
「幼き」とか完全に皮肉でしょ。前に座っている栞は俯いてるし。お爺様ってばひどい。
「それで河野栞は河野柚生の妹、つまり河野世也と河野有栖の養女となる」
え。うそっ。私と栞が姉妹になるってこと。けれど私の驚いたことは他所でお爺様は話を進めてしまうけれどいいしそれがお爺様だから。
「一週間後までに河野栞は河野柚生の家に越すこと。」
そう言ってお爺様は舞台から去っていった。
1週間後。今日は栞が引っ越してくる日。
「こんにちは。伯母様、伯父様。今日からお世話になります河野栞です」
栞の声は空っぽだった。世話を頼むようでもない。私の知ってる楽しいことが大好きで心配性な栞とは全く違った。
結局栞の部屋は私の隣になった。でも、栞の様子はおかしい。両親を亡くしたとはいえもう1週間と数日でしょ?少しは戻って行ってもいいじゃない。よーし、決めた。隣なんだし栞と話そう。
「コンコン」
とノックする。すると心底迷惑そうな栞の声が返って来た。
「なんのようでございます?」
お嬢様ぶってるようにも聞こえる。まあ事実社長令嬢っていうお嬢様だけど。
「私ですよ!柚木です」
すると中からものを投げるような音が聞こえてきた。栞ってば変わっちゃったな。
「どうぞ。用件なら手短に」
急に扉が開いた。中に突っ立っていた栞は怒ってるような悲しいような表情をしていた。いつもとは全く違う。
「栞、大丈夫なの」
さっきまでは励ますつもりだったけど不用意に励ましたら嫌な気持ちになるしまずは気持ちを聞いてみたいな。
「あなたに関係ある?」
その声は冷たかった。想像以上に。部外者扱いされるなんて。
(1巻1話終わり 2話に続く)


