婚約破棄されたけれど、10年越しの初恋を諦めきれません
それ以来、私は毎年、誕生日になると司さんに“デート”を要求した。

「婚約者に祝ってほしいんです。」

そう言うと、司さんは少し困ったように眉を下げながらも——

「……そうだね。婚約者だもんな。」

と、スケジュールを空けてくれた。

司さんは忙しい合間を縫って、私のためにレストランを予約し、さりげなくプレゼントを用意してくれていた。

ダイヤのピアス。ブランドのスカーフ。金箔の文庫本。

どれも、司さんのセンスが光るものばかり。

「今年もありがとう、司さん。」

「喜んでくれて、よかった。」

決して甘い言葉をささやいてくれるわけじゃない。

それでも、その時間だけは確かに、私の“王子様”は、隣にいてくれた。

一年に一度でもいい。

忙しくても、社交辞令でも構わない。

私はそれを、愛の証として胸に刻んでいた。

——そして。

節目の五年が、静かに、けれど確かに過ぎた。

私は、二十五歳になった。
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