拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 ホークと一緒に時間を過ごしていると、いつの頃からか胸がドキドキするようになった。
 この気持ちに本当は気づいているけれど、フィーヌは気づかないふりをする。
 
「ここはフィーヌの思い出の地なのだな」
「言われてみればそうかもしれません。子供の頃、両親とこの通りを歩くのが大好きでした。今日は何を買ってくれるだろうって」
「なるほど。さぞかわいい子供だっただろうな」

 ホークは屈託なく笑う。
  
「閣下にも、どこか思い出の地はありますか?」

 フィーヌはふと興味を覚えて、ホークに聞き返す。
 
「俺か? そうだな……領地にあるレイクタウンという場所は美しい湖があって、家族で何度か訪問した」
「へえ」
「そのうち、一緒に行くか?」
「はい、是非」
 
 フィーヌは頷く。ホークの思い出の地を、自分も見てみたい気がした。

 


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