拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 胸の奥に、ずきっと痛みを感じた。
 平民との婚外子とはいえ、シェリーの産んだ子供はロサイダー家の血を引いているはず。結婚が難しかったとしても、養子として迎え入れるに違いない。

(今夜折り入って話したいことって、その子供を養子に迎えたいって話よね)

 もしもホークにそんなことを言われたら、フィーヌは冷静でいられる自信がなかった。きっと、みっともなく泣いてしまう。

「はあ。わたくし、思った以上にホーク様のことが好きなのね」

 フィーヌは深いため息を吐く。
 結婚初日に夫に愛人がいると知って、この結婚は期間限定のものだと心に決めた。約束の期間でロサイダー領を豊かにしたら、きっぱりと離婚して出て行こうと思い、ずっと準備してきた。

(それなのに、未だに後ろ髪を引かれるなんて──)

 バナージと婚約破棄するときは一切未練を感じなかったのに、一体なぜだろうと考える。

「結局、わたくしが簡単な女だったってことなのかしら……」

 フィーヌを蔑ろにし続けたバナージに対し、ホークはまるで本当に愛しているかのように優しく扱ってくれた。
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