拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 アンナはおずおずとお礼を言う。

「付けてあげるわ」

 フィーヌは立ち上がってアンナの後ろに回ると、チェーンの留め金を繋ぐ。

「ほら、思った通りね。とっても似合ってる」
「奥様、ありがとうございます」

 アンナは嬉しそうに微笑んだ。



 朝食後、フィーヌは部屋で本を読んで過ごした。

「ねえ、アンナ。図書室で本を探してきてもらってもいいかしら?」
「もちろんです。なんの本を?」
「これなんだけど──」

 フィーヌが手渡したメモを見たアンナは「こんなタイトルの本、あったかしら?」と首をかしげた。

「たまたま面白いと耳にして、読んでみたいと思ったのよ。あるかわからないけれど……」

 フィーヌは口ごもる。
 適当に考えたタイトルなので、実際にはこんな本はないかもしれない。しかし、フィーヌの狙いはアンナと離れる時間を稼ぐことなので、それはたいした問題ではなかった。

「かしこまりました。まずは見に行ってみます」
「ありがとう」

 フィーヌは微笑んで、アンナを見送った。

「さてと」

 フィーヌは部屋を見回す。
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