拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 闘病中だった父が儚くなったのは、バナージがレイナと結婚して数カ月ほどした頃だった。
 それに伴い嫡男であったバナージは父のあとを継ぎダイナー公爵家の当主となり、領地経営を始めた。しかし、その頃から徐々に農作物の収穫高が減り始めた。更にはダイナー公爵家の大きな収入源であったリリト金山の採掘量も減少の一途を辿っている。

 危機感を覚えたバナージは新たな金鉱脈の発掘と、新事業への出資した。しかし、どれもこれも上手くいかず、借金は嵩むばかりだ。

 そのとき、部屋のドアが開いて「バナージ!」と明るい声がした。
 
「ねえ、見て! マダムシンシアの新しいドレスよ。今度、侯爵家のお茶会に呼ばれているからそのときに着ようと思って」

 部屋に入ってきたのは、真新しいドレスを着たレイナだ。
 新しいドレスを見せびらかすように、その場でくるくると一回転する。
 
「またドレスを買ったのか!?」
「また? まだ今月二着目よ? 今度のお茶会はファッションリーダーとして有名なリアーナ夫人が来るから、負けるわけにはいかないのよ。あ、ドレスに合わせて靴と宝石も買ったから、明日届くはずよ」

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