拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 悪びれる様子もなく言い放ったレイナに、バナージは絶句する。
 マダムシンシアは王室も御用達にしている完全オーダーメイドの高級服飾サロンで、一着作るだけで庶民が一年間生活できる額がかかる。更に、靴と宝飾品も買ったとなるとその額は数倍に膨れ上がっているはずだ。

「もうたくさん持ってるだろ! 今すぐ返品して来い!」
「なんですって? 返品なんてできるはずないじゃない。完全オーダーメイドなのよ? それに、靴と宝石は今日注文したばっかりなんだから!」

 怒るレイナを見て、バナージは苛立ちを募らせる。

(人が金策に奔走してるって言うのに──)

 かつては十分なたくわえがあったダイナー公爵家の金庫は、度重なる事業への投資失敗とレイナの浪費で既に空に近い。それでも領民からの税金があれば安定した収入になるはずだったのだが、農作物の不作で想定よりかなり税収が少なくなっていた。
 早急になんとかしなければならないのに、ダイナー公爵家の女主人であるレイナはそんなことお構いなしに浪費を繰り返し、お茶会や夜会などで遊び惚けている。

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