拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「きみが望むなら、俺が消してもいいが?」
「いいえ、大丈夫です。ホーク様の手をあんな人の血で汚したくありません」
 
 ホークは目を細めると、フィーヌの顎を掬い深いキスをする。
 そのキスを受け入れながらもフィーヌは考える。
 彼が言うとおり、もしフィーヌが望めばホークはあっという間にバナージをこの世界から消し去るだろう。
 
(『敵は徹底的に叩き潰せ。望むものは手段を選ばず奪い取れ』だったかしら)

 国防を司る辺境伯家らしく、実に苛烈な家訓だ。けれど、嫌いじゃない。

「どうやって懲らしめてあげようかしら」
「きみの気の済むままに。いくらでも協力する」
「うふふ。ありがとうございます」

 どうせだったら、心の底から後悔させてやりたい。
 こんな風に思うようになったのは、フィーヌがロサイダー辺境伯家の一員としてその色に染まったからだろうか。

 フィーヌは人知れず、口元に笑みを浮かべた。
 
 
   ◇ ◇ ◇

 

 バナージがフィーヌに手紙を出して、二週間が経った。
 この二週間、新たな金鉱脈が見つかったという知らせはなく、バナージは苛立ちを募らせていた。
 
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