拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 舞踏会会場の片隅にある休憩室のドアを閉ざして閉じ込めた上に衆人環視の中不貞行為で糾弾するという一連の事件を仕組んだくせに、自分が陥れた相手であるフィーヌを招待するなんて、相当図太い神経をしていることは確かだ。

「俺とフィーヌのふたりを招待か。まあ、十中八九、何か企んでいるんだろうな」
「ええ、そうでしょうね」

 フィーヌは頷く。
 バナージはずる賢さに関しては侮れないのだ。
 
「それで、俺の聡明な妻は一体どんなことを企んでいるのかな?」

 ホークはフィーヌを抱き寄せる。
 
「企むだなんて。少し助言をしに行くだけです」
「助言か。たしかにそうだ。フィーヌは助言をしただけであり、何が起ころうと結果の責任はダイナー公爵にある」

 ホークは喉の奥でくくっと笑う。

「それでこそ、ロサイダー家の妻だ」
「ふふっ。お褒めただき光栄です」
「きみは最高だよ」

 ホークはフィーヌの肩をぐいっと抱き寄せる。

「久しぶりの王都だから、楽しみです」
「そうだな。存分に楽しもう」
 
 どちらからともなく顔が近づき、唇が重なった。
 

第九章 今さら助けてくれてと言われても困ります


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