拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「2000万が入りました。他に札入れするお客様はいらっしゃいませんでしょうか?」 
 
 司会の興奮した声に、参加者たちは顔を見合わせる。
 
(競り落とした)

 バナージがほくそ笑んだそのとき、「3000万」という声がした。
 バナージはハッとしてその声がしたほうを見る。シルクハットを被った男に見覚えはないので、金回りのいい平民だろう。

(生意気なっ!)

 苛立ちと共に、「3500万」とバナージは叫ぶ。すると、先ほどと同じ男が「4000万」と言った。
 会場により一層大きなどよめきが起きる。
 
(4000万!? 嘘だろ?)

 4000万と言うと、元々狙っていたシーンよりもはるかに強気な価格だ。シーンは既に開発が開始していることを考えると、全く手つかずのテーゼにこの額が付くのは考えられないことだった。

(俺は公爵だぞ。あんな男に負けてたまるか!)
 
「5000万!」
「6000万」

 バナージが札を入れるや否や、男も新たな札を入れる。
 バナージがぎりっと奥歯を噛みしめた。
 
(どうする……。だが、フィーヌが土の精霊に聞いた場所なら間違いないはずだ)

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