拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 夕方、バナージが競売の会場に到着すると、表には思った以上にたくさんの馬車が停まっていた。これらはみな、競売に参加する人々のものだろう。

(どうやら本当に注目されているようだな)

 王都の一等地にも引けを取らない集客ぶりだ。

 中に入るとさらに熱気が籠っており、多くの人々が開始を今か今かと待っているところだった。

「皆さま。本日はお集まりいただきありがとうございます。最初の土地は──」
 
 進行の司会の合図で、次々と価格が入札されていく。バナージはその様子をじっと眺めた。

「次は、テーゼです。最低価格500万リーンから開始します」

 司会が大きな声で叫ぶ。

(500万か。想像より安いな)

 平米当たりの値段を考えると、買おうとしていたシートの五分の一だ。

「600万」

 バナージが札を入れる。すると、すかさず「700万」と別の参加者が札を入れた。
 土地の価格は800、900と順調に上がっていった。
  
「2000万」

 バナージが再び札を入れる。
 会場にどよめきが起きる。

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