拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 バナージが文面をなぞり、体を震わせる。手紙を握っている手に力が入り、紙がぐしゃりと潰れた。

(嘘だろう?)

 フィーヌならば絶対に喜んで協力してくれると思っていたのに、彼女の手紙からはバナージを手助けする意思が一切ないように見えた。
 それどころか──。

「……まさか最初から、気付いていたのか?」
 
 フィーヌはバナージとレイナが彼女を騙し、陥れたことを最初から知っていたのだろうか。
 それどころか、最初からこうなること──バナージとレイナが転落する未来を予想していたのではないだろうか。
 そうわかっていてバナージを手助けするそぶりを見せ、最後の最後で突き放したのだ。

『──後悔なさいませんか?』

 かつて婚約者だったフィーヌはバナージの元を去るとき、そう言って無表情に彼を見つめた。
 
『後悔などするわけがないだろう!』

 睨みつけるバナージの視線を浴びながらも、口元に微笑みを浮かべた彼女の姿が脳裏に蘇る。
 
「騙されたのは、どちらかしらね」

 くすっと笑うフィーヌの声が聞こえた気がした。
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