それが例え偽りの愛だとしても
その後も、彼の友人や親戚達は、真人様を離したりしなかった。

見かねた真人様のお母様が、私に話しかけてきてくれた。

「沙奈さん。今日は疲れたでしょう。」

優しく微笑む真人様のお母様に、私はそっと頭を下げた。

「……まだ大丈夫です。」

声が震えていなければいいけれど、と胸の中で祈る。

「そう。それはよかったわ。」

真人様の周りからは、友人たちの笑い声が響いている。賑やかで、幸せな空気が満ちているはずなのに――。

「そうそう。真人の、前の恋人だけど。」

ぽつりと、言葉が落ちた。

(……前の、恋人?)

体が一瞬こわばる。私は何も答えられず、ただ、お母様の言葉を待った。

「真人が熱心に通っていたんだけど、妾腹だったのよ。だから、結婚は反対してたのよ。」

(――えっ?)
< 36 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop