音のない世界で私の耳になってくれた君は
蛍のことか?
「すみません、落としたのあいつですか?」
俺は改札口にいる蛍を指差した。
「は、はい!ハンカチを…」
「あいつ耳が聞こえないんですよ…」
「そうなんですか?可哀想に…」
ピキッと堪忍袋の緒が切れた音がした。
「可哀想…?」
「何か言いました?」
…ふざけるな
差別とか意味わかんねーし
「いえ!とにかくありがとうございます。では!」
俺はひと足先に改札口を通った蛍に駆け寄った。
『ハンカチ落としてた。そこの男の人が拾ってくれてたよ』
『本当!?お礼言ってくる!』
俺は思わず蛍を腕に引き寄せた。
『言わなくていーよ。行こ?』
『う、うん』
俺と蛍は大学の方面の道に向かった。