恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
「しかもな。」

百合様の目が、どこか哀しげだった。

「そなたの父――清原實兼は、今回の件を受けて“大納言”に昇進したそうじゃ。」

「えっ……」

父が――?

思えば、私の立場が上がったその日、父はどこか嬉しそうだった。

娘への誇りではなく、己の出世の喜びを纏って。

私は拳をぎゅっと握った。

帝にお名前を呼ばれたあの一夜――

香りに包まれた、温かい記憶は、まるで夢のようだった。

でも現実は、私という存在すら、誰かの駒になっている。

それでも――

それでも、帝の視線を思い出すたび、胸が熱くなるのを止められなかった。

そして、中宮様の房への“お渡り”は、確かに増えた。

百合様の言葉は、嘘ではなかった。

しかし、そのたびに帝は私をじっと見る。

「春野か。なぜここに?」

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