恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
その問いに、中宮様は軽やかに、けれどどこか誇らしげに答える。

「我が侍女として召したのです。」

「そうか……」

帝の瞳に、ふわりと微笑みが浮かぶ。

「出世したのか。」

その一言だけで、胸が熱くなる。

覚えていてくださった。あの雨の日の、ただの雑士女の私を。

そしてその日の夕刻。

帝は中宮様と並んで庭を眺めながら、ふいにこう言った。

「そういえば……もう一人、妃を迎えることになった。」

その言葉に、私は思わず背筋を伸ばす。

「どこぞの姫君でしょうか。」

中宮様は、まるで用意されたかのように笑みを浮かべる。

「もしかして、内裏の東の姫君――橘の家のご息女でしょうか?」

「ああ、そうだ。」

帝はそう言って、やや遠くを見る。

「政の都合だ。朕の意思ではない。」

そう――それは、まるで言い訳のようだった。
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