ほしうらない

聞こえた会話も、聞こえなかった会話も。
忘れたふりをして生きていくと決めたのに。

1メートル先にいた有明さんがこちらに戻ってくる。

「帰るか」

提案と決定の間の声音だった。私は首を振る。
乗ってきた新幹線は行ってしまった。

「オムライス、食べて帰ります」
「いや、顔色が悪すぎる」

動かない私に、有明さんは小さく息を吐いた。

こちらに手が伸ばされ、顔の横に出ていた髪を一房、耳にかけられた。少し触れた手が冷たい。

「じゃあ行くか」
「……その前にちょっと」
「ん?」
「御手洗いに行って良いですか……気持ち悪くて」

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