君と解きたい数式がある
統合と加法、ふたりの関係式
数学の授業中。咲良は、ノートの端っこに書いた数式を見つめていた。
x+y=?
解のないまま止まったその式は、まるで今のふたりの関係みたいだった。
放課後、図書室の静けさの中。
咲良はノートを開きながら瑛人に言った。
「ねえ、“加法”ってさ、
ふたつのものを足して、新しいひとつを作ることでしょ?」
瑛人はうなずいた。
「うん。x + y みたいに、別のものを“ひとつに”する操作だね」
咲良は、ちょっとだけ躊躇ってから続けた。
「じゃあ、私と一ノ瀬くんの気持ちも、足せるのかな」
「……え?」
「私、“好き”って気持ち、たぶんひとりで持ってるだけじゃ不安で。
でも、もし一ノ瀬くんも、少しだけ“好き”があるなら…
ふたりで足したら、ちゃんと“確かな何か”になる気がしたの」
瑛人は、ノートを咲良のほうへそっと向けて、
ひとことだけ書いた。
= love
「数学的には成り立たないかもしれないけど、
僕の中では、これが正解」
咲良は、思わず吹き出して、でもすぐに顔を赤らめた。
「なにそれ…ずるい…」
「式としては、ちょっと恥ずかしいけどね。
でも、本当に大切な気持ちは、きっと“変数”じゃない。
いつか“定数”になる。ちゃんとした、答えになるって信じてる」
その瞬間、咲良の心の中で、
何かがひとつに溶けあっていく気がした。