婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「んっ……美味しいです」
 エステルの一言が、その場を和ます。
「皮の部分はパリッとしていて香ばしいんですけど、身の部分がぷりぷりとしていて……」
 魚を捕っていた男たちはそうだろう、そうだろうと、満足そうに頷いている。
「アドコック領では、各時期に捕ってもいい魚の量を決めている。だから彼らはむやみやたらに魚を捕らない。また秋に捕った魚は、塩漬けにして冬の保存食にする」
 それがこのペレ集落の生活の仕方なのだ。
 ギデオンたちの話に耳を傾けている間に、エステルは魚を一匹、ぺろりと食べてしまった。
「ごちそうさまです、美味しかったです」
 お腹も満たされ、少し休んだところで帰る時間となった。
 だが後日、エステルはまた、オーブン魔導具修理のためもう一度ここに来る。それもセリオと二人で。
「領主様、エステル様、セリオ様。今日は本当にありがとうございました」
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