婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 アビーが抗議の声を上げるが、男は彼女を一瞥しただけで言葉を続けた。
「あれはもういい。それよりも逃げるぞ」
「逃げる?」
 エステルは目を丸くした。突然の言葉に頭が追いつかない。
「あ、ちょっと待ってください」
 エステルは有無を言わさぬ勢いで部屋の外へ引きずり出された。腰に巻いた工具入れを肌身離さず持っていてよかったと、心の底から安堵する。
「ちょっと、エステルをどこに連れてくつもりよ」
 アビーも慌ててエステルの後を追って部屋を出る。
「だから逃げるんだよ。ここが相手にバレちまった」
「ここってどこ? 誰から逃げるの?」
 アビーの鋭い声が響くが、男は苛立たしげに吐き捨てた。
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