婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 ハンナは目を丸くしたが、すぐに微笑んだ。
「お嬢様が楽しみにされているのであれば何よりです。雪だるまは作りたいとは思いませんが、私も雪に触れてみたいとは思います」
「ほら。やっぱりハンナも雪に興味があるんじゃない。きっと、アイスクリームも作れると思うのよ」
 雪の中に入れたら、ミルクも凍ってしまうだろう。
「作れるとは思いますが、雪に囲まれて食べるんですか? 寒くて凍えてしまいますよ」
「それもそうね」
 そこでふと、エステルの頭に前世の記憶がかすめる。
 冬にこたつに入りながら食べるアイスクリームほど贅沢なものはなかった。
(そうか……寒かったら暖房用の魔導具を作ればいいのだわ。魔導職人のアビーさんってどのような方かしら)
 エステルはアドコック領での生活に、期待を寄せた。
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