婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルは戸惑いながらも頭を下げた。
「やだなぁ。エステル嬢。オレとエステル嬢は、はじめましてじゃないんだ。でも、オレのこの凛々しい姿を見るのは初めてだろ? どう? セディよりオレのほうが格好よくない?」
 初夏を思わせるようなさわやかな緑色の目は印象に残っている。そのさわやかな笑顔に見覚えがあるような気もするのだが思い出せない。
「えぇと、以前もどこかで?」
「もぅ、エステルさんったら。一緒に勉強した仲じゃないですか」
 そこでジュリアンが声色を変えた。それはどこかかすれて、艶めいている声。
「ジュリー・アンセントです」
 そのひとことに、エステルの頭は一瞬停止した。情報が多すぎて、思考が追いつかない。
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