婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 エステルの声は小さく揺れる。
 セドリックの腕が少しだけ動いたが、またそこで静止する。
「セドリック様にはジュリーさんがいるじゃないですか」
「あれは! いや、それもきちんとエステルに言わなきゃならないな。実はジュリーは……」
 そこでドンドンドンと乱暴に扉が叩かれ「エステル嬢、起きたか?」と軽い口調の男性が部屋に入ってきた。
「おい、セディ。今からエステル嬢を襲う気満々っていう格好でいるなよ」
 彼はセドリックをからかうようにして笑った。
「うっさい。なんなんだ、おまえ。おまえが来ると話がややこしくなるんだよ」
 セドリックが顔を赤らめ、苛立たしげに言葉を返す。
「あ、エステル嬢。この格好でははじめましてだね。オレ、ジュリアン・ヴァサル。このヴァサルの王子」
 騒ぐセドリックを無視して、ジュリアンがにこやかに自己紹介を始めた。
「あ、はい。はじめまして。エステル・ヘインズです」
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