婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
「だが、ヴァサル国の改革派の奴があの技術に目をつけたら? それを考えただけでも背筋が凍る」
 ただでさえ、改革派の人間は手段を選ばない。今だって、ターラント国の魔導具を密輸しているという噂もあるのだ。
「俺のエステルが、あいつらにいいようにされたら……おまえのせいだからな」
 セドリックがジュリアンに向かってクッションを投げつけた。
「わかった、わかった。本当に悪かったって。早くおまえがエステル嬢を迎えにいけるように、なんとかして密輸組織を捕まえないとな」
 ジュリアンが女装してまで動き回っているのは、その密輸組織を捕まえることが目的だ。そこが改革派の人間と繋がっていることを突き止め、王弟派の人間を洗い出したい。
「ちっ」
 舌打ちをしたセドリックは、ジュリアンを睨みつけることしかできなかった。
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