婚約破棄されたので辺境で新生活を満喫します。なぜか、元婚約者(王太子殿下)が追いかけてきたのですが?
 それではまるで、雪かき後に腰を痛めるのはジェームスだと言っているようなもの。
 ジェームス本人も心当たりがあるのか「左様でございますね」と、今度は背中を丸めている。
「ジェームス。おまえが使っているその道具をエステルに貸してやれ」
「それでは私の作業ができません」
「だから、おまえの腰を労ってやってるんだ。おまえは、中の仕事の指示をしろ。おまえに寝込まれたら困るのは俺だけではないんだからな」
 突き放すような言い方の中にも、どこか愛情を感じる。
 ジェームスは渋々とその言葉を受け入れたようだ。だがそれには、申し訳なささも感じられた。
「旦那様、エステル様……。それではお言葉に甘えまして、私は中の仕事に戻らせていただきます。美味しい朝食を用意するよう、料理人には指示を出しておきます」
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