弟のように思っていたのに、恋を教えてくれて――。

***

「俺じゃ、駄目か?」
「えっ?」

 パソコンから視線をそらし、私は顔を上げた。夏樹と私は見つめ合う。

「俺は、本気で遥と恋人になりたいと思っているから……考えといて? あと、思い詰めすぎないでな」

 夏樹は私の頭をぽんと叩くと、白い歯を見せながら微笑み、コートを羽織ってカフェから出ていった。

――夏樹のこと、恋人だとか……。そんな風に考えたことはなかった。だって、夏樹はいつも私の後ろに隠れている弟のような存在だったから。

『俺は、本気で遥と恋人になりたいと思っているから』。

 頭の中で言葉が鮮明に何度も流れる。
 それから最近一緒に過ごした日々も。

 胸の奥がきゅっと締まるように疼いた。



 見慣れたカフェの景色が輝いて、違う空間に思えてきた。


✩.*˚
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