私たちの関係は変わらないと思っていた。
後日、大我の部屋にいる時彼の従兄弟がゴタゴタに巻き込んだことに対しての謝罪をしに来た。曰く件の代議士は離婚に関しては多額の慰謝料を貰った時点で終わっており、これまで通りとはいかなくとも成瀬総合病院との付き合いは続けるつもりだったようだ。それなのに兄の次は弟と結婚なんて倫理的にどうなのか、と難色を示していた。
しかし大我の父親が「下の息子は娘さんのことを気に入っている」と嘘を吹き込み娘も乗り気だったことから、前向きに考えていたのに実際は全て嘘。代議士は娘を傷つけられただけではなく、騙されたことで今度こそ大激怒。信用出来ない相手とは付き合えない、と本当に縁を切られてしまった。離婚で大人しく引き下がっておけば良かったのに、欲を掻いた大我の父親は一族内での発言力を失い肩身の狭い思いをしているという。そう遠くないうちに従兄弟に院長の座を明け渡すのではと囁かれている。その前に一時的に大我の叔母が院長の座に就く案も出ているらしいので、そうなれば大我に手を出すことは出来なくなるだろう。従兄弟は「お前はお前の好きに生きろ」と言い残し去って行った。
「政略結婚しないといけないほど、病院の経営状況悪くないんだよ。野心家の父親に巻き込まれなければ兄は今もうちの病院にいたんだろうな」
嫌いだと言っていた兄の現状に思うところがあるのか、大我は悲しそうに呟いた。彼の兄は今関西の病院におり、その隣には結婚するまで付き合っていた女性がいるらしい。彼女も同じく医者で、政略結婚がなければ普通に結婚していたかもしれない。慰謝料を払ったせいで財産をかなり失ったものの、彼は彼なりにやっていくのだろう。
従兄弟が帰った後綾香と大我はソファーに座り寛いでいた。が、不意に大我が真剣な顔をする。
「…アイツに父親抑えられるかな、心配だわ」
「また縁談持ち込まれるとか…?」
不安げに問いかける綾香を大我は安心させるよう、いつもの癖で頭を撫でる。
「大丈夫だってガン無視するから。もしくは結婚すれば向こうは何も言えなくなるよな…綾香、高城と成瀬どっちが好き?」
「え?」
脈絡のない質問に綾香は素っ頓狂な声を上げた。
「俺成瀬に何の思い入れもないから、綾香が良ければ高城になりたい。そうなればおじさん達とも名実共に家族になれるしな。寧ろ高城大我の方が響きが良い」
「…もしかしてプロポーズ?」
「ん?違う違う、プロポーズはもっとロマンチックにするから。ただの確認、結婚したらどっちの名字になりたいかって」
「…もうそれほぼプロポーズだよ」
綾香が顔を真っ赤にして俯くと、時間差で自分が何を言ったのか気づいた大我も盛大に照れてしまった。大我の名字が綾香と同じになったのはこの日から丁度半年後。そして大我に協力してもらったゲームが配信されたのは更に半年後。ゲームのキャラクターのモデルは自分達。結ばれるまでの過程がよりロマンチックに、当て馬や元恋人が現れてハラハラドキドキさせるものになっており、プレイした大我は悶えることになるのだった。

