私たちの関係は変わらないと思っていた。
「…言い訳にしかならないけど聞いてくれるか。俺にとって高城家って仲の良い理想の家族そのものだったんだよ。うちの親は兄としか喋んねえし俺は居ないもの扱い。何をやっても褒められないし失望されるだけ…そんな冷たい家庭しか知らない俺が温かい家庭で育った綾香のことを好きになっても、絶対幸せに出来ないから無意識のうちに気持ちが育たないよう蓋をしてたんだと思う。だから他の奴と付き合っても長続きしないし、キス以上のことが出来なかったんだ…とっくに好きな奴が居たから」
綾香は真剣な表情で自分の気持ちを告げる大我から目を逸らせず、唇を震わせて込み上げてくる涙を必死で堪える。夢でも見ているのだろうか。だってあまりにも都合が良すぎる。
「…私寝ぼけてるのかな?大我くんが私の事好きとかありえ…いひゃい」
「俺の告白を夢扱いするとは良い度胸だな、現実に決まっているだろ」
顰め面で綾香の頬を優しくつねった大我は手を離すと立ち上がり、綾香の目の前に移動して座った。
「…俺に勇気がなかったせいで傷つけてごめん、けどもう自分の気持ちに嘘は吐かない。綾香のことが好きだ、擬似じゃない本当の恋人になってくれ…っ!」
綾香は咄嗟に大我に抱きついていた。酒の力を借りなくても大胆な行動を取れることに気づかされた。
「…私も大我くんのこと好きだよ。ずっと好きだった」
「俺もだよ…」
綾香は顔を上げ大我と見つめ合う。お互いの顔が近づいて行き、2人の唇が重なった。綾香にとっては初めての、大我にとっては何度目かのキス。複雑な気持ちにならないと言えば嘘になる。だが過去にこだわっていても仕方がない。大事なのはこれからだ。キスがだんだんと深くなっていき、唇の隙間から舌が差し込まれ肩が跳ねるも綾香は受け入れた。ゆっくりとカーペットの上に押し倒される。部屋着の裾から大我の大きな手が入り込んで来て…我に返り大我を押し除ける。
「待って!お、お母さんいるから!」
「…そうだった、流石にこのままはムードがないよな…準備もしてねぇし」
準備、その言葉が意味することを想像した綾香の顔は再び真っ赤になる。大我は優しく微笑みながら綾香の上から退いてくれた。
「…綾香の心の準備が出来たらさ、本当の意味で俺のものになって?」
甘い声で問いかける大我に綾香はコクリ、と頷いた。2人が本当の意味で結ばれたのは2週間後のことだ。