初夜に暗殺された王女は魔獣の国で再起する~魔獣の国の王の求愛がとまりません
しばらくそのまま仕事に没頭していたが、突如としてシェリアが口を開いた。

「陛下。城下に出ることはできませんでしょうか?」

「え?どうした?」

突然だなと目を向ける。

「この報告書が気になるのです。二年前の書類と今年の書類を見比べると明らかにブドウ園の収穫量がおかしいのです。半分以下になっています。ここ数年我が国には天候の大幅な変化などはないはずです。魔獣被害も調べましたが、逆に減っているくらいです。だからこの半減はおかしい。何かあるのではないかと…」

「そうか」

さすがだ。
キルギアの農作物と呼べる唯一のものがブドウで、それを使った赤ワインはキルギアワインとして大陸中に出回っている。さらっとした飲み心地で濃厚なナダルのワインとはまた違った良さがあり、世界中で人気だ。そのブドウの収穫量が減っていると。
戦闘ばかりで気づかなかった。
この国を担う者たちは自分を含め魔獣との共存と戦闘のことだけを考え、魔晶石を狙う隣国と戦闘しかしてこなかった。
戦闘にはたけていても政治的な交渉手段となるとまったく素人同然といえる。
シェリアのような政治的手腕のある人間が必要だ。
やはり自分は間違っていなかったと今になってひしひしと感じた。

と、その会話を横耳に聞いていたラインハルトは突如立ち上がると、執務室の奥にある書庫にすたすたと入っていき、分厚い資料を持ってきた。
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