涙のあとに咲く約束
   * * *

 それから、週一で藤堂さんの家に通うのは変わらずだけど、彼との距離は少しだけ遠くなった。

 会話は必要最低限。
 それでも私は、真一くんの前では笑顔を崩さないようにした。
 私の事情なんて、この子には関係ないのだから。

「おねえちゃん、これみて!」
 
 真一くんが保育所で作った紙飛行機を持って駆け寄ってくる。
 
「わあ、かっこいいね。飛ばしてみようか」
 
 リビングで一緒に飛ばしながら、笑い声を交わす。
 藤堂さんは台所からその様子を見ていたが、目が合うとすぐに視線をそらした。


 夜、真一くんを寝かしつけるとき、彼が小さな声で言った。
 
「ねえ、おねえちゃん……ずっと、ここにいてくれる?」
 
 その言葉に、私の胸の奥が痛む。
 
「もちろんだよ」
 
 そう答えると、真一くんは安心したように目を閉じた。

 
 その寝顔を見ながら思った。
 私はもう、この家から離れたくないーーたとえ、藤堂さんの気持ちが私に向いていなくても。

   * * *

 一週間後の夜。
 真一くんが眠った後、私は荷物を持って帰ろうとした。
 玄関で靴を履いていると、背後から藤堂さんの声がした。

「……ありがとう」
 
 振り向くと、彼は少しだけ笑っていた。
 
「真一のこと、君がいてくれると助かる」
 
 その言葉は、まだ答えではないことは承知の上だ。
 けれど、私の中に小さな灯がともる。

「私は、真一くんが大好きです。もちろん、藤堂さんのことも」
 
 まっすぐにそう伝えて、ドアを開けた。
 夜風が頬を優しく撫でる。
 藤堂さんがどう答えるのかーーそれは、もう少し先のことになるだろう。

 でも私は待つことを決めたのだ。
 彼と、この子と、一緒に生きられる日が来ると信じて……
 
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