涙のあとに咲く約束
「真一、ちょっとこっちに来て」
その声が、やけに低く響いて聞こえる。
私は足を止め、胸の高鳴りを押さえながら近づいた。
そしてーー
彼はポケットから、小さな箱を取り出した。
「……俺はずっと、恋愛なんて自分には許されないと思ってきた。兄夫婦を失ったあの日から。でも、二人と過ごして……もう一度未来を信じたいと思うようになった」
世界の音が、すっと遠のいた。
彼の言葉だけが、真っすぐに胸に届く。
「松下さんーー俺と、真一と、一緒に生きてくれないか」
箱が開き、指輪が陽を受けてきらめいた瞬間、視界が滲んだ。
「……はい」
頬を伝う涙が、冷たい空気で少しひやりとした。
「やったー!」
真一くんが跳びはね、私たちを見上げる。
藤堂さんが、安堵と喜びが入り混じったような表情で、そっと私の手を握った。その手は大きくて温かく、震えていた。
ーーああ、この人もずっと迷って、そして今、私を選んでくれたんだ。
そう思うと、驚きから嬉しい気持ちが込み上げて、涙が止まらなかった。
* * *
桜が咲き始めた川沿いを三人で歩く。
真一くんが真ん中で、私と藤堂さん改め賢二さんの手をしっかり握っている。
私の左手薬指には、あの日贈られた指輪が輝いている。
「みて! もうさいてるよ!」
「来週には満開だな」
賢二さんと目が合い、自然に笑みがこぼれる。
その笑顔は、もう迷いを含んでいなかった。
これから先も、この温もりを失わないようにーーそう強く願いながら、私は真一くんの手をぎゅっと握り返した。
【終】
その声が、やけに低く響いて聞こえる。
私は足を止め、胸の高鳴りを押さえながら近づいた。
そしてーー
彼はポケットから、小さな箱を取り出した。
「……俺はずっと、恋愛なんて自分には許されないと思ってきた。兄夫婦を失ったあの日から。でも、二人と過ごして……もう一度未来を信じたいと思うようになった」
世界の音が、すっと遠のいた。
彼の言葉だけが、真っすぐに胸に届く。
「松下さんーー俺と、真一と、一緒に生きてくれないか」
箱が開き、指輪が陽を受けてきらめいた瞬間、視界が滲んだ。
「……はい」
頬を伝う涙が、冷たい空気で少しひやりとした。
「やったー!」
真一くんが跳びはね、私たちを見上げる。
藤堂さんが、安堵と喜びが入り混じったような表情で、そっと私の手を握った。その手は大きくて温かく、震えていた。
ーーああ、この人もずっと迷って、そして今、私を選んでくれたんだ。
そう思うと、驚きから嬉しい気持ちが込み上げて、涙が止まらなかった。
* * *
桜が咲き始めた川沿いを三人で歩く。
真一くんが真ん中で、私と藤堂さん改め賢二さんの手をしっかり握っている。
私の左手薬指には、あの日贈られた指輪が輝いている。
「みて! もうさいてるよ!」
「来週には満開だな」
賢二さんと目が合い、自然に笑みがこぼれる。
その笑顔は、もう迷いを含んでいなかった。
これから先も、この温もりを失わないようにーーそう強く願いながら、私は真一くんの手をぎゅっと握り返した。
【終】


