最強スパダリ吸血鬼が私を運命の人だと言って離してくれない!

体育祭後の打ち上げ

打ち上げ当日。




とうとうかげくんと一言も交わさないままこの日がきてしまった。



教室の中は普段よりも賑わっていて、机の上にはお菓子やジュースが大量に並べてある。




壁や天井には簡単な飾り付けがされていて、みんな各々集ま
って打ち上げを楽しんでいた。



数時間後には花火が上がる。



それなのにかげくんの姿はどこにもなかった。






「ね、ひかりちゃん」



何かを食べる気になんてならなくて、一人離れたところに座っていると虹香ちゃんがちょんちょんと優しく手招きをした。




不思議に思いながら虹香ちゃんに近づく。



「どうしたの?」



虹香ちゃんの隣に座ると彼女はシンプルなデザインのポーチをカバンから取り出した。



全体的に真っ白で真ん中に小さくリボンの飾り付けがされていて、いかにも女の子って感じのポーチ。



虹香ちゃんはその中から、くしや可愛らしいゴムをいくつか机の上に置く。


「ふふ、どれがいいかな」



楽しそうに選ぶ虹香ちゃんの隣でピンときていない私はきょとんとした表情で彼女を見る。



そんな私を見て虹香ちゃんは優しく微笑む。


「もうすぐで花火が上がるでしょ? こういうのは好きな人と見なきゃっ! だからちょっとだけオシャレしてみない?」



「私にはこんな可愛いもの似合わないよ……」



「大丈夫! 可愛くするから!」




そうしてテキパキと道具を並べ始める虹香ちゃん。




「女子力高いんだね。羨ましいなぁ」



「そんなことないよ。私ね、お姉ちゃんがいるの。これも全部お下がりなんだ。――髪の毛触ってもいい?」



準備を終えた虹香ちゃんはくしを持って私に向き直る。



「う、うん。よろしくお願いしますっ」
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